講話【教育実習生に伝えたい】大切なこと
多くの学校では、6月や9月を迎えようとする時期に、教育実習生を迎え入れます。
わたしも懐かしい思いで、教育実習生の指導に当たったことがあります。
今回は、教育実習に行かれる方に向けて、伝えておきたいことをまとめました。
教育実習生を指導される方も、ぜひご覧いただき、実習生に こうお伝えください。
「本当に、一生涯を通じて、教員を続ける覚悟はありますか?」
悪いところを見る
教育実習生は、子どもからすれば大人ですが、教員からすれば、ふつうの学生にすぎません。
たとえ、子どもたちの前に立とうとも、半人前として扱われます。
もちろん、本気で教育実習を受けるのであれば、半人前なりに吸収することがたくさんあるはずです。
そんな実習生に、なにを学んでほしいか というと、「教員の悪いところ」です。
わたしが実習生だったときに言われたことです。
もちろん、教員のいいところも学んでほしいという思いはあります。
しかし、教員を早期に辞めてしまう人が多く、それは、教育実習とのギャップにあるのではないかと考えています。
教員という仕事が想像と違っただけで辞められてしまっては、先輩の先生たちが何のために時間や労力を割いたのか分かりません。
現場の先生たちは、本当に時間的に余裕がない中で、実習生の指導をしています。
自分の仕事ができなかったり、空き時間が潰れたりするにもかかわらず、指導してくださるのです。
まずは、そこに感謝しなければならないと同時に、時間的な余裕のなさが教員の悪いところであると知っておいていただきたいです。
教員の限界を知る
ここで一つ、質問です。
現場の先生たちは、本当に子どもの可能性を最大限に伸ばせていますか?
わたしは、そうは思いません。
もちろん、実際には 子どもの可能性を伸ばそうとしている先生が大多数です。
その反面、先生方ご自身が受けてきた教育を、今の子どもたちに押し付けてしまう場面もあるように感じます。
特に、自信がある先生ほど、今の子どもたちに適さない「暴力的な指導」を行ってしまうこともしばしばあります。
ひとつの学校に先生は大勢いますが、担当する先生の相性によっては、子どもの可能性をうまく伸ばせないということがあります。
さらには、言葉のかけ方一つで、子どもの可能性の芽を摘んでしまったり、潰してしまったりことがあるのも事実です。
また、職員室のような 子どものいないところで、
「あの子は、ああいう子だから仕方がない」
なんていう話を聞くことがあります。
一部の方だけですが、「教えても無駄だ」と、諦めていらっしゃる先生がいるということです。
そう、限界を感じておられるのです。
教員は教育者ですが、その前にひとりの人間です。
人間には限界があるので、教員にできないことがあっても何の違和感もありません。
教員として生きていく中で、指導に失敗することもあります。
子どもの可能性をうまく伸ばせなかったときは、「今のわたしは、ここが限界なんだ」というように考え、次の手立てを考えていきたいものです。
しかし、「やらなければならない」という義務感で、心を病んでしまわれる方も少なからずいます。
だから、もし 子どもに対して十分なことができなかったとしても、自分を責めすぎないでください。
教員も人間。だから、限界がある。
ツラさを想像してみる
正規教員の勤務自体は、教育実習生にとって、一番わからないところです。
1週間ずっと指導教官につきっきりという訳ではないからです。
分掌業務も、各種会議も、学年の仕事も知りません。
そこで、指導教官がどんな1週間を過ごしているか想像してみるといいです。
朝から晩まで学校にいて、子どものために動き続けなければなりません。
休みもないに等しいです。
部活動があれば、土日も潰れます。
7日間労働なんて、ざらにあります。
知り合いの先生は、部活動の関係で、65日連続勤務だったと言っていました。
休みがなくてツラいと、何度も言っていました。
とくに、小学校や中学校は激務ですので、教育実習くらいで悲鳴をあげていては話になりません。
本当に、教員の仕事をなめてはいけませんよ。
教育実習生は、まだ学生です。
だから、学生特有の「ラクをしよう」という考えの人が多いです。
ただ、ラクをするために教員になるのは間違っています。
授業さえしていればお金がもらえるというのは、非常勤講師くらいです。
正規の教員として働くのなら、これは通用しません。
あまったれるのは、学生のうちだけにしておいてくださいね。
対応力を磨く
また、学校現場では、さまざまなことが起きます。
私の経験では、ある生徒が不登校になって退学したり、登校途中で行方不明になってしまったりしました。
ある生徒は、体育の授業でボールが胸に当たり、心配停止になってしまったこともあります。
幸い命に別状はありませんでしたが、子どもが学校で生活している以上、毎日いろんなことが起こります。
そして、教員は、そのひとつひとつに対応しなければなりません。
事件・事故や問題が起こったときには、すぐ管理職に連絡をします。
また、ことがおさまってから、保護者や地域のかたへ状況を報告しなければならないのです。
ここで、教員になるかたへ、少しだけ実践的なことをお伝えしましょう。
保護者の対応についてです。
最近は、モンスターと言われるような保護者がいらっしゃいます。
学校に関心があるのはいいことだと言えますが、度を超しているかたは、先生の時間も精神もすり減らしていきます。
実際に、モンスターペアレントに当てはまる保護者のかたから、次のようなお電話をいただきました。
今日、うちの子は、化粧をしていたと、先生から言いがかりをつけられました。
本人は、化粧なんてしてないと言っているのに、反省文を書かなきゃいけないなんておかしいです。
いますぐ撤回して、謝ってください。
すぐに、この保護者の方が言いがかりをつけてきているとは思いました。
しかし、そこは大人しく「そうでしたか」と話を聞くに徹するのです。
そうして、こちらが謝ることのないまま、話を聞くこと3時間が経過します。
もう21時になろうとしているところでした。
滞ってしまった仕事をする時間を返せと思うのですが、そんなこと、口が裂けても言えません。
こうした場面では、大人な対応が求められます。
教員は、感情的にならないように、自分をコントロールすることが大切です。
そこで、学生のうちから、感情をコントロールするクセをつけておくとよいでしょう。
教員として覚悟する
あなたが本気で教員になりたいのなら、その仕事については、よく知っていることと思います。
もちろん、大変さも考慮した上で教員を選んだということですよね。
その覚悟は本物ですか?
何があっても揺るぎないものですか?
わたしが実習生だったときに、一番足りなかったものが「教員としての覚悟」です。
教員をしていると、楽しいことも、ツラいことも、たくさんあります。
しかし、たとえツラいことが続いたとしても、根幹となる強い気持ちがあれば、また前を向くことができます。
もし、実習でツラいと感じることがあったなら、その10倍も正規教員はツラいことがあると思って覚悟してください。
やりがいは大いにありますが、楽しいことばかりではありません。
では、もう一度、あなたに問いましょう。
本当に、一生涯を通じて、教員を続ける覚悟はありますか。
覚悟がある人は、ブレることなく、教員としての道を突き進んでください。
きっといい先生になれることでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。