若手教員【退職金】今 退職したら何万円?
定年を迎える前に 教員を辞めるとき、一体いくらの退職金がもらえるのでしょうか。
今回は、20~30代の若手教員の方が 教員を辞めた場合にもらえる、退職金の金額についてお伝えします。
納める税金についても かんたんに伝えます。
退職金は0円!?
「退職金は、退職するときに絶対にもらえるお金」
だと思われていらっしゃる教諭の方が多くいらっしゃいます。
しかし、初任者教諭の場合、採用後1年間は「条件附採用期間」です。
お忘れの方がいらっしゃるかもしれませんが、身分としては「まだ 正式に採用されていない教員」です。
そのため、勤続年数が6か月に満たない場合、退職金は0円です。
そのほか、懲戒免職などの処分を受けたあとの退職でも、退職金が出ないことがほとんどです。
退職の手続きは、こちらをご覧ください。
退職と金額の違い
退職金の金額は、退職の形式によって異なります。
若手教員の方の場合は、自己都合によって辞めることがほとんどです。
自己都合で辞めることは、一般的に「依願退職」と言われます。
所属校の校長先生を通して、採用された自治体に退職を届け出て辞めます。
年齢は関係ありません。
もちろん、教諭ご本人が死亡された場合は、自己都合による退職と金額が違ってきます。
教諭ご本人がお亡くなりになった場合は、退職手当として遺族の方に支給されます。
退職金の額を知る方法
では、ここから、1年以上の勤続年数である方の退職金を見ていきましょう。
計算式で算出できます。
県費負担職員の自己都合による退職手当の算出式は、次の通りです。
退職手当=退職時の月額給与×支給率+退職手当の調整額
上記の式については、退職時にもらった書類に記載されていたものです。
式に出てくる「支給率」とは、前もって決められた数値のことです。
以下に自己都合による退職のときの支給率を勤続10年まで載せておきました。
勤続年数(年齢) | 自己都合の退職手当支給率 |
1(23歳) | 0.5022 |
2(24歳) | 1.0044 |
3(25歳) | 1.5066 |
4(26歳) | 2.0088 |
5(27歳) | 2.511 |
6(28歳) | 3.0132 |
7(29歳) | 3.5154 |
8(30歳) | 4.0176 |
9(31歳) | 4.5198 |
10(32歳) | 5.022 |
(令和2年4月1日現在)
では、式に出てくる もうひとつの「退職手当の調整額」について説明します。
早い話が、若手教諭に限っては、この調整額は0(ゼロ)になります。
くわしく申し上げると、勤続9年以下の自己都合による退職の場合は、調整額が支給されないということです。
ということで、若手教諭の退職手当を算出する式は、次の通りです。
退職手当=退職時の給料月額×支給率
いたって単純ですね。
月額給与が20万円で、1年目の3月末で辞めたとすると、退職手当の金額は、次のようになります。
20万円×0.5022=10万440円
実際に、知り合いの教諭が1年で辞めており、確認をとったところ、これとほぼ同額でした。
なお、勤続年数の規定については、ほかに取り決めがあります。
育児休業や停職などの期間が含まれる場合は、勤続年数が少なくなりますので、事務部の方に確認するとよいでしょう。
退職金を当てにできない
大学を卒業して、すぐに教諭になった若手の方は、支給されている月額給与が少ない状態です。
そのうえ、勤続年数も少ないです。
だから、「退職金がたくさん入る!」というようなことはなく、もらえる金額は微々たるものなのです。
ちなみに、わたしは、20代半ばで自己都合により退職しました。
たった数年の勤務だったので それ以上のことは言えませんが、勤続年数が1年増えるごとに、約10万円ずつ増えるイメージです。
定年退職の場合も、算出式自体は同じです。
ただ、若手とは違い、調整額がかなり加算されるので額が大きくなります。
「退職金だけで2,000万円くらい もらえる!」と、定年退職された先生が言っておられました。
若手のうちに辞めるということは、この調整額が0(ゼロ)であるという点で、退職金の額が小さくなると言えます。
さらに税金で少なくなる?
所得税
退職手当として支給される金銭も、いわゆる所得にあたります。
しかし、退職手当は「退職所得」に該当し、給与所得とは別で課税される仕組みになっています。
この「退職所得」には、特別控除制度というものが適用されます。
つまり、給与所得よりも、課税される額が小さくなるということです。
何といっても、退職手当は、退職後の生活費になります。
もし、給与所得と同じように所得税を納めてしまっては、生活が苦しくなりかねませんからね。
特別控除制度では、大きく3段階に分けて、納める税金を算出します。
まず、課税が控除される金額を算出します。
退職所得の控除額は、勤続20年以下の場合、次のように計算します。
控除額=40万円×勤続年数
なお、上記の計算式の結果が80万円未満の金額である場合、控除額は80万円になります。
たとえば、勤続1年であっても、2年であっても、ともに控除額は80万円になります。
勤続3年なら、以下のように計算します。
勤続3年の控除額=40万円×3年
=120万円
この控除額の意味は、「退職手当の120万円までは、まったく税金がかからない」ということです。
大卒採用であればありえませんが、仮に、勤続3年で150万円の退職金をもらったとするなら、控除額を引いた残り30万円(150万円ー120万円)には税がかかる可能性があるということです。
次に、実際に課税される金額を算出します。
計算式は単純で、次の通りです。
課税退職所得金額=(退職手当の金額ー控除額)× 0.5
上記の式の意味は、退職手当から控除額を差し引いた金額に、2分の1を乗じた金額が課税退職所得金額になるということです。
上記の式の結果に所得税率を乗じるなどして、納税額を算出します。
ただ、大卒採用で、勤続年数が10年以下のような若手教諭であれば、退職手当に所得税はほぼかかりません。
仮に課税退職所得金額が1,000円以上195万円未満の場合、所得税の税率は5%になっています(令和2年4月1日現在)。
「なんだ、若手の退職手当には所得税がかからないのか~」
と気を抜いてはいけません。
所得税の次は、住民税を見ていきましょう。
住民税
わたしたちが納める住民税は、一般的に 前年の所得に対して課税され、納めることになっています。
では、4月末に支給される退職手当にかかる住民税は、翌年納めることになるのでしょうか。
答えは、「いいえ」です。
退職手当にかかる住民税は、現年課税という仕組みが適用されます。
早い話が、翌年に納めるのではなく、退職手当を受け取るときに納めるということです。
これにより、退職手当の手取り分は書面よりも少なくなります。
支給日の4月末に通帳を見て、
「あれ?なぜ こんなに少ないの!?」
とならないように、心得ておきましょう。
また、教員を辞めた後、忘れてはいけないのが6月に届く「住民税の納付書」です。
多くの方は、退職金からこの住民税を納められるそうです。
退職金を遊ぶお金にすべて使ってしまわないように気をつけてください。
もし、納付書が届いた年度の所得(見込み)が、前年度よりも少なくなりそうで、かつ、基準の所得金額以下であれば、減免されることがあります。
そうでない限り、納付書にある金額を期日までに納めなければなりません。
結果として、若手で教員を辞めるのであれば、退職金を当てにすることは難しいと言えるでしょう。
だから、自分で生活していくために、まずは、あなたに合った仕事探しをお勧めします。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。