知らないと【恥】暑中見舞いと残暑見舞いの違い
7月から8月にかけて、お付き合いのある方に向けて、お手紙を送ることがあるのではないでしょうか。
「暑中見舞い」や「残暑見舞い」と言われるものです。
では、このふたつの違いは、何でしょうか。
今回は、日本人なら 知っておきたい「暑中見舞い」・「残暑見舞い」の違いをお伝えします。
「暑中」と「残暑」の大きな違いは?
漢字をそのまま読み取りましょう。
「暑中」
暑さが厳しい最中
「残暑」
季節は移り変わりつつあるのに、まだ暑さが残っているとき
つまり、「暑中見舞い」は夏真っ盛りに出す手紙、「残暑見舞い」は夏が過ぎても続く暑い日々に出す手紙だと分かります。
正式には、時期が決まっているということも知っておきましょう。
暑中見舞い
夏の土用の時期に出す手紙です。
年によって、日にちは変わります。
そもそも、「土用」正式名称は、土旺用事(どおうようじ)と言います。
この「土旺用事」自体は、中国の五行思想に由来していると言われます。
五行思想とは、古代中国で生じた哲学的な考え方です。
この思想によると、地球上に存在するすべての物は、水・金・火・木・土の5つの要素から成り立っていると言います。
そこで、1年間というひとつのサイクル「春・夏・秋・冬」にこれらを当てはめたわけです。
順番は、少し変わりますが、次のように対応するシーズンが決まっています。
水:冬
金:秋
火:夏
木:春
土:?
そう。「土」だけ 何も割り当てがないのです。
というわけで、「土」は各シーズンに割り当てられています。
早い話が、「土用」は、春・夏・秋・冬 どのシーズンにもあるのです。
もう少しくわしくお話すると、立春・立夏・立秋・立冬の直前 約18日間ずつをさします。
年によって 立春・立夏・立秋・立冬の日付けが変わるので、気になる方は、カレンダーなどをご確認ください。
ちなみに、2020年は、7月19日(日)に「夏の土用入り」をしています。
そして、8月6日(木)が「夏の土用明け」となっています。
翌日が「立秋」です。
暦の上では、秋なのですね。
外がどれだけ暑くても・・・。
暑中見舞いは、この「立秋」の前日までに送り届けるのが常識なのです。
残暑見舞い
ここまでお伝えしたように、「立秋」となれば、暦の上では秋です。
そうして、秋が始まっても暑さが残っているときに出す手紙が「残暑見舞い」です。
期間で言うと、おおよそ8月中旬から8月末まででしょう。
それ以降は、年によって、送っても良いかどうかが変わります。
たとえば、2018年は、猛暑の日々が9月になってからも続きました。
そのため、9月上旬でも、「残暑見舞い」を送っても大丈夫だと言えました。
今年はどうでしょう。
35度を超えるような暑い日々が続くでしょうか・・・。
気温や街の雰囲気を見ながら、「残暑見舞い」がふさわしいかどうか 適切に判断できれば、問題ありません。
不安なかたは、先ほどの目安となる立秋後から8月末までに送りましょう。
手紙の内容の違いは?
大きく変わるのは、次の2つです。
・時候の挨拶
・相手への気遣い
時候の挨拶
時候の挨拶とは、手紙の書きだし部分に書く一文です。
季節感を出し、相手のからだを気遣う内容にします。
ポイントは、手紙を書くときではなく、手紙が届くころの季節感を大切にするということです。
日本語は、言葉によって、ニュアンスが少しずつ違うので、辞書を引いたり、インターネットで検索したりして、適切な言葉を選びましょう。
その言葉選び自体が 相手への気遣いにもなります。
「え~そんなの考えていられないよ」
という方へ、かんたんな書き始めの文があります。
「○○の候(こう)」と書き始めるだけの文章です。
○○にあてはまる言葉は、8月の場合、次のようなものが考えられます。
・炎暑の候
・酷暑の候
・晩夏の候
・立秋の候
・残暑の候
・秋暑の候
あくまでも、暦の上で、「夏」なのか、「秋」なのかは判断しなければなりません。
カレンダーを見て、「立秋」を探すだけでOKでしたよね。
「立秋」の前までが夏なので、「炎暑」「酷暑」「晩夏」を用いるべきでしょう。
「立秋」のあとは、秋なので、「残暑」「秋暑」を用いるとよいです。
ここに挙げていない言葉であっても、実際の季節感に応じた言葉であれば、時候の挨拶に用いることができます。
○○の候、みなさま お変わりなくお過ごしのことと思います。
と書いておけば、それらしい時候の挨拶になりますよね。
相手の気遣い
「暑中見舞い」は、夏真っただ中に出す手紙のため、
猛暑が続きますが、みなさま お変わりなく お過ごしでしょうか。
というように書きます。
つまり、厳しい暑さだけれども、お体の方は大丈夫かと、相手の方を気遣うのです。
これに対して、「残暑見舞い」の例は、次のようになります。
立秋とは名ばかりの暑さが続きますが、みなさま お変わりなく お過ごしでしょうか。
立秋を過ぎても、暑さがまだ続いているけれども、夏の疲れにやられていないかと、気遣うイメージで書きます。
このように、同じ「暑さ」について気遣うのですが、少しだけニュアンスが変わるのがポイントです。
目上の方に向けて書くときの注意点
ここまで、「暑中見舞い」と「残暑見舞い」の違いについてお伝えしました。
ここからは、これらに共通する、恥をかかないためのポイントをお伝えします。
手紙を書くときは、相手のことを思って書くのが当然です。
とくに、会社の取引先や上司に送るときには、失礼がないように気をつけるべきです。
今後の仕事にも関わってきますからね。
これについて、実は、「○○見舞い」というのは失礼にあたる書き方なのです。
ご存知でしたか?
ここまで「暑中見舞い」や「残暑見舞い」と書いてきましたが、目上の方に向けて書く場合は、「○○御伺い」と書きます。
敬意を示すために、「見舞う」のではなく、「伺う」のです。
目上の方に向けて書くときは、気をつけて書きましょう。
(最後に)手紙を書きましょう
最近では、距離や時間を超えて、SNSでかんたんに ほかの人とつながることができるようになりました。
その一方で、ほかの人の気持ちを察したり、気遣ったりする場面が減ってしまったように感じます。
携帯電話が普及する前までは、ラブレターも郵送で やり取りしていたものです。
愛おしい相手からの返事を待ち遠しく思い、距離や時間を乗り越えてゴールインすることも多々ありました。
それが今では、一言、一言が軽くなり、SNS上で かんたんに暴言を吐く人を見かけます。
そのような方にこそ、大切な相手に向けて お手紙を書いてほしいものです。
書いている最中の「相手を思う気持ち」を大切にしていただきたいのです。
わたしたちは、人間です。
「こころ」があります。
これを捨ててしまっては、いよいよロボットになってしまいます。
「こころ」を感じ、「まごころ」を伝えるためにも、ぜひ お手紙を書いてください。
いつまでも、日本は「温かい国」のままだと、わたしは思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。