学校【置き勉】おススメしない理由

近年、日本の教育が変わりつつあり、学校で使う教材のボリュームが増しています。

そのような中、

「重たい教材を、学校に置いておくべきではないか?」

という声が上がっています。

今回は、教員生活を通して感じた、置き勉をしないことのメリットを3つお伝えします。

 

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置き勉をしないことのメリット

教材が盗まれることを防げる

なぜ、以前から学校の先生が 口うるさく「置き勉するな」と指導するのか知っていますか?

学校の先生が指導するには、きちんと理由があります。

 

学校は、いわば「公共の場」です。

一般的に考えて、公共の場所に個人のものを放置しておくと、どのようなことが起きるでしょうか。

 

「自分の物ではないけれど、借りてしまえ」

と、他人の物を勝手に使い、その後、元あった場所に戻さず、紛失させてしまうことが考えられます。

学校で生活しているのは、子どもたちです。

まだ、物事に対する分別がつかないと予想できます。

 

また、借りた物を 勝手に自分のものにしてしまうケースも実際にありました。

つまり、これは、人の物を盗む「窃盗罪」にあたります。

ふつう、万引きといった「窃盗罪」は、10年以下の懲役、または、50万円以下の罰金に処される可能性がある犯罪です。

 

置き勉を推奨すると、学校で盗難事件が起きやすくなると考えられるのです。

 

これに加えて、いじめの問題がからむこともあります。

被害者が使っていた教材が無断で落書きされたことや、教科書の一部のページが破られていたことが、実際にあります。

 

こうなってくると、学校側としては、授業どころではなくなります。

そうして指導がくり返されることで、授業時間や子どもたちの遊ぶ時間を削る必要性が出てくることもあります。

 

安易に置き勉を認めてしまうと、子どもたちに悪い影響を与えてしまいかねないのです。

子どもが悲しむことだけは、避けたいとは思いませんか?

 

教員だったからこそ、子どものためになることをしたい と個人的に考えます。

社会人になれば、荷物を自分自身で管理することも大切です。

この管理能力を身につけてもらうためにも、荷物の持ち帰りが有効だと考えています。

 

教材を持ち帰ることで、体力がつく

一時期、「小学生の置き勉」が話題になっていました。

そこで、

 「重たい荷物が、子どもの負担にならないように」

と、発言される方が多くいらっしゃいました。

そうして、保護者の方に言われて、「置き勉」に対応した学校もあります。

 

そのうち、ある私立学校では、小学1年生が持ち帰るものは、筆記用具宿題だけになっています。

そのほかの教科書や副教材は、ふつう 持ち帰らせないそうです。

いわゆる、置き勉を推奨している学校です。

そうした取り組みにより、子どものランドセルの重さは、平均して約1.3㎏といいます。

 

これに対して、ふつうの小学1年生が使う教材をランドセルに入れた場合、2倍の重さになるといいます。

 

専門家の方の話を聞いてみると、

小学1年生であれば、3㎏以下の荷物が望ましい」

という内容でした。

 

ふと、ここで、ある疑問が生まれました。

 

小学1年生が持ち帰るべき教材を含めると、約1.3kgの2倍、つまり、約2.6㎏の重さになるはずです。

この「2.6kg」は、専門家が言う3㎏以下になっているではありませんか。

 

つまり、ある程度の荷物を持ち帰っても、子どもの負担にならないということが言えます。

 

 

また、わたしが考えるに、小学生であれば、教材を毎日 歩いて 持ち帰ったほうが、体力のある子どもに育ちます。

体力があれば、体調を崩しにくくなり、呼吸器系や循環系のはたらきを 維持することにもつながります。

 

子どもにとっては、多くのことがトレーニングであり、経験なのです。

大人になると、ラクな方向に流され、衰退してしまう傾向があります。

そうした「ラクな考え方」を子どもに押しつけるのではなく、努力や頑張ることの意義を伝える方が よっぽど重要だと感じます。

 

その日の授業で使う教材を持って行って、ちゃんと持ち帰ってくるというのは、立派なトレーニングです。

子どもたちは、ほどよい重さのカバンで通学することで、知らないうちに 体力がついていくのです。

 

 

ただし、保護者の方には、注意していただきたいことがあります。

ほどよい負荷をかけることがトレーニングの基本であるということです。

お子さんの中には、むやみやたらに 重い荷物を持ち運ぶのが好きな子もいます。

実は、わたしもその一人でした。(笑)

子どものうちから 身体に大きな負荷をかけ続けると、正常な身体の発達に影響を及ぼすことがあります。

その点だけ、お子さまの将来のために、気をつけてあげるといいですよ。

 

また、子どもの身体の大きさによっては、荷物が重すぎることもあります。

わたしは、小学生高学年のころから、あまり身長が伸びなくなりました。

そのことが関係し、まわりにいた同級生が軽いと思うものでも、ずっしり重さを感じていました。

子ども ひとりひとりに適した荷物の重さがあることも頭に入れておいていただけるとよいと思います。

 

家での予習・復習が基礎学力につながる

置き勉の影響は、盗難や体力低下にとどまりません。

公立学校であれば、置き勉による 学力の低下も否めないのです。

 

ここでは、学力の似た子どもが通う私立学校 以外で考えています。

私立学校であれば、公立学校に比べて 悪い影響を小さくできると個人的に考えているからです。

そのため、私立学校で置き勉を認めるのは、一般的な公立学校よりも かんたんでしょう。

(理由は、お金があるからというところに行きつきます。)

 

しかし、公立学校の場合、話が変わってきます。

なぜなら、公立学校に通う子どもたちには、学力のばらつきがあるからです。

この学力のばらつきが、置き勉をさせない理由に関係しています。

 

わたしの経験上、置き勉を認めても、学力が高い子どもほど、置き勉しない傾向があるように感じます。

これに対して、学力が低い子どもは、教材といっしょに、その日の宿題や課題を学校に置いたまま 下校してしまう可能性が高いのです。

 

そうして、ただでさえ 学力が低いにもかかわらず、宿題や課題はいつまでもやらないままになってしまうのです。

挙句の果てには、提出課題を紛失してしまう始末・・・。

 

こうしたことを頻繁に繰り返す子どもは、自分の物を管理する能力が低いと推測できます。

だからこそ、置き勉を許すことなく、自分の教材を管理させる必要があると、わたしは考えます。

 

家庭内のコミュニケーションにつながる

こうして見てみると、荷物を用いて帰ることが、子どもに よい影響を与えるとは思いませんか?

 

では、すべての教材を 学校に置きっぱなしにしたときの問題点について、お伝えします。

子どもは、宿題をしているとき、何かしらの疑問が生じるはずです。

 

たとえば、算数や数学の宿題をしているとき、

「なんとか式を立てることはできたけど、ここからの式の解き方が分からない…」

という疑問が生じたとしましょう。

 

式の解き方であれば、教科書を見ながら、同じようにやれば解けるはずです。

 

このように、わからないところがあったら、ふつう教科書を見て解決しますよね。

そのほかにも、授業で使っている教材やノート・プリントが挙げられます。

 

しかし、そうした教材を 家に持ち帰っていなければ、宿題を一人で解ききることはできないのです。

学力が低いのであれば、なおさらです。

 

 

このことに対して、

「塾のテキストを使うから大丈夫だ」

という、保護者の方の声が聞こえてきそうです。

 

わたしの塾講師の経験からすると、塾のテキストは、参考書というよりも、問題集に近いイメージです。

そのため、一人で宿題をするとき、やはり解き方に納得できないままになります。

これでは、理解が不十分なまま、学校の次の授業に臨む原因になってしまいます。

 

ここで、ひとつ言えることは、子どもにとっては、保護者の方が宿題を見てあげるのが一番だということです。

もちろん、学校の教材を見せてもらいながら です。

 

最近は、学校や塾に頼り切って、子どもの面倒をみるのは 食事ぐらいだという保護者の方もいらっしゃいます。

そうではなく、家で

「宿題で 分からないところはない?」

「じゃあ、この問題はいっしょに解いてみようか」

といった声かけをすることで、子どものモチベーションはかなり上がると考えます。

 

わたしの家庭は、両親ともに共働きでしたが、休日になると、両親がわたしの勉強に付き合ってくれました。

今から思うと、感謝の気持ちでいっぱいです。

そうした親からの愛情が、子どもにとっては一番うれしく、心が温まるものではないでしょうか。

 

学校の教材を通して、子どもの学力が維持につながり、親子のコミュニケーションもとれて、一石二鳥です

現代社会では難しいかもしれませんが、塾に通わせなくても、親が子どもといっしょに学べばいいのです。

 

 

社会全体に余裕がない今、置き勉を推奨することで、自分の子どもがこの先どうなるのか、考えられないのも無理はありません。

社会全体で、こういった根本的な内容をとり上げ、考えるべきだと思います。

あなただけは、決して、「置き勉をしたほうが 子どものためになる」という表面だけの情報に惑わされませんように

今回の記事を通して、さまざまな見方をしていただければ幸いです。

あくまでも、子どもの将来のためになることを考えたい、ただそれだけです。

 

 

(最後に)学校現場では対応に追われる

世の中の「置き勉をさせるべきだ」という流れに乗って、学校は、子どもや保護者の方からクレームを受けます。

学校側は、その対応策を思案しているにもかかわらず、さらに強いバッシングを受けることもあります。

ときには、PTAの会長さんから、直接 学校に対して「置き勉させるように」というたぐいの連絡も…。

 

ただでさえ、通常の学校業務が膨大になっているのに、これ以上、先生の負担を増やさないでいただきたいです。

実際に、学校では、保護者の方からの電話対応も、かなりの負担を強いています。

授業や分掌業務、担任業務などがメインのはずなのに、それ以外で割く時間が多すぎるのです。

 

だからと言って、授業も保護者対応も、なおざりにすることはできません。

精神も体力もすり減った先生が、子どもに良い影響を与えられるとは 考えにくいです。

もし、置き勉を認めたとしても、置き勉の制度づくりや教材の盗難対応など、業務が増えることしか考えられません。

そのため、わたしが学校長の立場なら、置き勉の件は 柔らかくお断わりいたします。

 

 

以上、学校での置き勉を勧めない理由でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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