高校生【社会人基礎力】身につけるためにやること
最近、各高校で「社会人基礎力」の講和が行われています。
今回は、この「社会人基礎力」を高校生に向けて、かんたんにお伝えします。
社会人基礎力って何?
社会人基礎力とは、自分でお金を稼ぎ、生活していくために必要な力のことです。
あなたが自立するために必要な力とも言えます。
お金を稼ぐためには、基本的なスキルが必要になります。
たとえば、多くの会社で、お客さまと話をしたり、企画書を作って上司に提案したりします。
もし、コミュニケーション能力が欠けていたらどうなるでしょうか?
運よく、ある企業に採用されたとして 考えてみましょう。
コミュニケーションは、主に 相手と意思疎通を図るための方法です。
この能力が欠けている場合、お客さまと話をすることも、企画のプレゼンテーションも、うまくできないわけです。
正直に言って、会社側にとって そのような人材は、必要ないと判断されます。
いわゆる、クビ (解雇)です。
クビになってしまえば、無職(ニート)になります。
無職の状態から、新しい仕事を探そうと就職活動しても、なかなか雇ってもらえません。
面接に行っても、コミュニケーション能力が低いために、自分の魅力を十分に伝えられないことも予想できます。
とくに、履歴書の欄に「○○会社 退職」とあると、なぜ辞めたのか理由を訊かれます。
正直に、クビになったと言ってしまうと、
「この人は、能力がないんだな。不採用。」
となりかねません。
そうして、どの会社にも採用されないまま、正社員として働くことが難しいと予想できます。
正社員でなければ、安定して お給料をもらうことができません。
お金を自力で稼ぎ、生活していくことが難しくなってしまうのです。
ここまで見て お分かりいただけるように、社会人になって 突然、コミュニケーション能力を高めることは難しいと言えます。
何といっても、「相手との意思疎通を図るスキル」は、学校生活の中で磨かれていくものだからです。
以上のことから、社会人の基本的なスキルは、今のうちに身につけておかなければならないのです。
「社会人基礎力」を詳しく知りたい
経済産業省が言い始めた「社会人基礎力」は、上の図のように、3つの力で成り立っています。
また、それぞれの力を、さらに細かい能力要素に分けて考えています。
「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。
引用:経済産業省ウェブサイト( https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/ )
上記は、経済産業省の公式サイトから引用させていただいた文章です。
この「多様な人々と仕事をしていくために」という文言から、仕事では、人とのかかわりが重要視されていることが分かりますね。
社会人基礎力について、もっと詳しく知りたいというかたは、次の記事を参考にしてください。
社会人基礎力を身につける前に
あなたがもっている、社会人のイメージはどのようなものでしょうか?
仕事が大変で、夜遅くに家に帰るイメージ?
自分の時間が少なくなり、窮屈なイメージ?
または、自由で、毎日が楽しいイメージでしょうか。
社会人基礎力を身につける前に、あなたが社会人になったときのイメージをもってみることを勧めます。
そうすれば、あなた自身に何が足りないのか、あるいは、どのような力を磨かなければならないのかが見えてきます。
とくに、社会人になると、学生時代に やらなくてよかったことを 行わなければならなくなります。
たとえば、1日のスケジュール管理や、お金の管理が挙げられます。
今は、高校生なので、時間割というスケジュールが組まれていて、時間を見て動くだけになっていますよね。
さらに、ここから、お金の管理について お伝えしておきます。
あなたは、お金の管理をきちんとできていますか?
なにも、お小遣い帳を作れとまでは言いません。
しかし、手に入れたお金を何に使うかくらいは、自分で判断してほしいのです。
わたしの家庭では、テストで良い点数を取ると、お小遣いがもらえるという制度がありました。
高校生のとき、数学の定期テスト(微分・積分)で100点を取れたときは、1,000円ももらうことができました。
この1,000円をムダにしないために、さらなる学習教材を買う資金にしました。
わたしは、自分の将来に投資したわけです。
さて、あなただったら、1,000円を手にしたとき、どうするでしょうか?
高校生のうちは、家族のどなたかが、あなたの学習に使う教材費などを収めていることでしょう。
実際に、教材費がいくらかかっているのか、知らない高校生も多いのが現実です。
ご家族の方も、お金に関する話は、できればしたくないと思われていると考えられます。
しかし、社会人になれば、イヤでも お金の管理を自分で行うことになります。
高校を卒業して、大学生・専門学校生になるとしても同じです。
進学校に通う 多くの高校生は、アルバイトの経験は少ないのではないでしょうか。
学校で、原則アルバイトは禁止とされているところも多いですから。
そのため、
「大学生なったら、アルバイトしてお金を稼ぐぞ!」
と意気込んでいる高校生もたくさんいます。
お金を自分で稼ぐのはいいことです。
ただ、お金の管理のしかたを知らないと、貧しい生活や借金地獄につながりかねません。
もし、お金を管理することに不安があるのなら、まずはここから始めてみてはいかがでしょうか。
実際に、金銭出納帳をつけている高校生に出会ったこともあります。
(わたしが教員をしていたときの話です。)
大切なのは、あなたが社会人になって、将来 幸せな生活を送るために、今をどうするかということです。
高校生が社会人基礎力を身につけるにはどうする?
では、ここからは、3つの能力を磨くために、意識すべきポイントをお伝えします。
「前に踏み出す力」を磨く
この能力があれば、あなたが認識した問題点や課題点を改善するために、早く対応することができるでしょう。
能力要素は、「主体性」「働きかけ力」「実行力」です。
学校で、指示待ち人間になってはいませんか?
もし、「まわりの人が動いてから動く」というタイプであれば、前に踏み出す力の「主体性」は低いと言えます。
まだまだ磨きが足りません。
学校でも、家でも、人から言われる前に動くように意識しましょう。
もし、人から言われる前に行動できるという方であっても、注意が必要です。
なぜなら、そのような方に限って、ひとりで突っ走ってしまうという傾向があるからです。
最初は難しいかもしれませんが、まずは、ひとりで先に行きたい気持ち・衝動を抑えるクセをつけます。
その後、声をかけるなどして、まわりの人たちを うまく巻き込んでみましょう。
「チームで働く力」を磨く でもお伝えしますが、関係している人たち全員で取り組むことを意識すれば、あなたが苦手とすることも他の人がやってくれます。
結果的に、あなたの能力を補ってくれる仲間と仕事した方が 早く仕事を終わらせられるのです。
根幹にあるのは、イヤなこと・苦手なことにも立ち向かっていくことです。
「これはイヤだから、やらないでおこう」
では ダメなわけです。
あなた自身の成長もここでストップしてしまいます。
しかし、
「ここまではできるようにする!」
という目標を立て、スモールステップで、一歩ずつ実行していくことが社会人になっても求められます。
今から意識するだけでも十分です。
イヤなことから目をそらさず、自分でやれそうなとこまではやってみましょう。
まずは、「逃げればいい」という考えを捨てることです。
このことは、忍耐力にもつながります。
最近の子どもは、大人に甘やかされて育っているため、我慢することがとても苦手な傾向があります。
わたしが高校生だったころは、授業中の1時間、立たされっぱなしというのは、ふつうにあったことです。
しかも、正しい答えを言えなかっただけで立たされていました。
今は、時代遅れだと言われるようなことですが、今とは違い、我慢すべき場面が多々あったのです。
だから、日ごろから、我慢することに慣れていました。
今の子どもにとって、自分は「我慢できないタイプだ」という認識がないように思います。
「ツラいことから かんたんに逃げられるから大丈夫だ」
なんて、思い込んではいませんよね?
高校生である以上、もう甘い考えは 捨てたほうがいいでしょう。
ただし、少年・少女の心は、いつまでも もち続けてくださいね。
高校生のうちに「青春してほしい」と個人的に思っていますので。
「考え抜く力」を磨く
この能力があれば、仕事上の問題点をいち早く発見し、改善する順序・方法の計画を立て、より良い方向に修正することができるでしょう。
能力要素は、「課題発見力」「計画力」「創造力」です。
まずは、何が問題点のなのか 把握できなければなりません。
たとえ、「考えられる人」だったとしても、今の状況を正しく把握・分析できなければ、計画や行動に移したの段階でつまづいてしまいます。
少し考えてみましょう。
あなたは、3か月後に、国公立大学の受験が控えていると仮定します。
親からは、浪人はさせられないと言われています。
9月の模試(模擬試験)において、第一志望校の判定は、Eランクでした。
さて、あなたは、このまま第一志望校を目指しますか?
はっきり言って、答えは、本人の意思の強さによって変わります。
だから、目指すのは どの大学でも良いのですが、ここでお伝えしたいのは、このときの課題点は何かということです。
無謀そうな挑戦に思うかもしれませんが、Eランクの第一志望校を目指すことを決めたとします。
すると、次のような課題点がおもに挙がるはずです。
・今の段階で、本腰を入れて勉強していない。
→ 勉強不足が課題点である。
・得意科目ばかり勉強している。
→ 苦手科目の勉強を怠っていることが課題点である。
・一生懸命 勉強しているが、成績が伸びない。
→ 勉強のしかたが合っていないのが課題点である。
このとき、「合格」だけを見ていてはいけないのです。
受験まで3か月という時間があります。
その中で、いかに「合格する」という目標に近づくかを、今の状況をもとに 分析しなければならないのです。
そうして、分析した後は、計画を立てていきます。
計画を立てるときのポイントは、無理をしすぎないプランであることです。
「この日は、100ページあるテキストを1冊終わらせる」
という計画では、きっと破綻してしまうでしょう。
「1日に5ページずつ勉強して、20日で終わらせる」
というように、無理のない計画であれば、勉強も長続きします。
この適切な計画を立てられるようになることも必要な力です。
「チームで働く力」を磨く
この能力があれば、さまざまな人との協力によって、1つの目標にいち早く近づくことができるでしょう。
能力要素は、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「状況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」です。
たとえば、あなたが とても苦手なことがあるとします。
これを ひとりでやらなければならない場合、やる気も起きず、なかなか終わらせることができません。
これが、チームだったらどうでしょう?
たとえ、あなたが苦手とすることであっても、ほかの人にとっては、呼吸をするに等しいくらい かんたんなことかもしれません。
だから、ひとりでやるには限界がありますが、チームでやれば可能性はグンと広がると言えます。
この良い例として、高校生3人(Aさん、Bさん、Cさん)の話をします。
わたしが勤務していた高校の生徒には、社会科教員を志望する生徒(Aさん)がいました。
Aさんの学年は3年生で、冬には大学入試が控えていました。
そこで、Aさんは、朝早くから登校し勉強していると、学力の低い生徒(Bさん)に社会科の授業をしてくれと頼まれました。
これを続けていると、Bさん以外にも、Cさんが生徒役として授業に加わり、3人で学習することになりました。
Aさんは、社会科が得意科目です。
その代わり、数学や国語は苦手という生徒でした。
Bさんは、社会科は苦手ですが、数学はズバ抜けてできるという生徒でした。
Cさんも社会科の点数は平均点くらいでしたが、国語の「古典」ができるという生徒でした。
こうして、お互いが お互いの弱いところを教え合うことで、国立大学への合格を果たしました。
わたしの経験談
Aさんは、教員志望だったこともあり、BさんやCさんにとって分かりやすいように説明していたと言います。
これこそ、相手に何かを伝える際、大切にすべきポイントですね。
また、BさんやCさんは、先生役だったAさんの話を熱心にきいたと言います。
そして、分からないことがあれば、その都度、Aさんに質問していたというのです。
聞き手の大切なポイント「傾聴力」を、3人とももっていたと言えるでしょう。
さらに、3人は、それぞれ得意科目と不得意科目が違っていました。
しかし、
「なんで分からないんだよ」
と、お互いをバカにすることは一切なかったのです。
それぞれの「苦手」を認め合い、得意科目は ほかの人に教えるという関係ができていたから、3人とも成功したのだと思います。
このほかにも、成功した理由があります。
3人は、朝早くに登校して、みんなで勉強するというスタイルをとっていました。
そのため、3人の約束「早朝登校」が知らず知らずのうちにできていました。
なんと、この約束は、大学入試 2次試験前の自由登校期間になっても守られていたのです。
人との約束を守る力「規律性」もそなわっていたから成功したと言えるでしょう。
社会人でなくても、世の中には、さまざまな人々がいることくらい分かっていると思います。
もちろん、まわりにいる人の好き嫌いもあるでしょう。
しかし、社会人になって仕事をしていくときには、嫌いな人・苦手な人ともうまく仕事をしていかなければなりません。
お客さまであればなおさらです。
そのためにも、今のうちから、相手がどのようなことを考えているのか、察する力を磨いておくことも必要だと考えます。
そうして、チームのみんなで協力して、気持ちよく仕事をするのです。
「人生100年時代の社会人基礎力」とは?
人生100年時代と言われる昨今です。
そのような時代の中で、経済産業省は、次のことを言い始めています。
「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した「社会人基礎力」はむしろその重要性を増しており、有効ですが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。
こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。
社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。
引用:経済産業省ウェブサイト( https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/ )
「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料
つまり、中堅世代になると、2006年から提唱してきた「社会人基礎力」を身につけるだけでは、不十分だということです。
「社会人基礎力」を身につけた上で、自分自身がしてきたことをふり返り、新たな目標・目的を立て、人生を通じて学び続けるということが求められているのです。
よく高校生で勘違いをする人がいます。
「就職がゴール」
そうではありません。
就職したら、人生の第2幕のスタートです。
だから、新たなる 次の目標を立てるのです。
たとえば、
「今期の売り上げNo.1社員になる」
「作業効率を上げ、定時に帰る社員になる」
という目標が挙げられます。
一般的に、若手のうちは体力があるため、多少 努力しても、身体にガタが来ることは少ないと言えます。
しかし、中年になると、身体の節々が痛くなるなど、少し無理しただけで、身体が悲鳴を上げるようになります。
さらに、退職が近くなってくると、その会社にとって重要な役職に就くことがあります。
いわゆる、管理職です。
責任を取らなければならない立場になり、精神的に追い詰められる方もいらっしゃいます。
このように、ひとつの会社で働き続けたとしても、年齢や社内評価などによって、活躍する場面が変わっていきます。
これが、経済産業省が言うところの、
「ライフステージの各段階で活躍し続ける」
ということではないでしょうか。
人生100年時代です。
就職を人生の第2幕だとするならば、第3幕、第4幕、第5幕・・・へと長く続いていくことが予想されます。
それぞれの場面で、あなたの「社会人基礎力」を大いに発揮しつつ、自己・他者・社会を理解する必要があるのです。
そうして一歩一歩、他者や世界のために 道を拓いていく力が「人生100年時代の社会人基礎力」なのだと わたしは考えます。
最後に、大切にしてほしいこと
ここまで、「社会人基礎力」についてだけ、お話してきました。
「今、世間で求められている力だから調べている」
という方も多いと思います。
しかし、わたしは、社会人基礎力よりも、もっと大切なものがあると考えています。
AIやロボットに、人の心は分かりません。
わたしたち人間にしかないものです。
だからこそ、心は、ときにして人を悩ませたり、苦しませる原因になったりします。
しかし、それも含めて、わたしたち「人間」なのです。
この「心」という人間の魅力を大切にしつつ、人生100年時代を 支えあって生きていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。