大学受験【夏休み】入試を知り、志望先を考える
夏休み前は、多くの高校で進路指導が入念に行われます。
理由は、大学受験に利用できる長期休暇がこの夏休みしかないからです。
高校教諭の経験を通して、近年の大学入試の傾向をお伝えします。
大学入試の種類は大きく分けて4種類
一般入試
ごく一般的な入試です。
前期日程や後期日程のほか、中期日程がある公立大学もあります。
センター試験や大学共通テストを利用するか、しないかをはじめ、試験の方式は、大学によってさまざまです。
また、私立も含めて 試験名を見てみると、「A方式」「3教科型」などという名称があります。
各方式によって、名称が変えられている大学が多いです。
受験科目をよく確認した上で、志望先を選ぶとよいです。
よくあるのが、受験科目になっている科目を 3年次で履修していないというケースです。
模擬試験(模試)を受けると思いますが、多くの場合、履修している科目の問題は解きます。
もし、履修していない科目も受験科目になっている場合、志望リストに挙げても、正しい判定が出ませんので注意してください。
お金をかけて受ける模試ですので、できるだけ有効活用できるようにしましょう。
なお、同じ大学・同じ学部内であっても、1つの方式の試験を利用することができる大学もあります。
つまり、試験は1度で、いくつも出願できるということです。
十分な下調べが必要になりますが、併願することができるので、受験生にとっても、保護者の方にとってもメリットがあります。
ある生徒は、同じ大学で60個も受験していて、とても驚きました。(笑)
AO(アドミッション・オフィス)入試
現在は、縮小・廃止の傾向が強い試験です。
一昔前までは、AO入試で入学を決める生徒が多かったのですが、一時期、学力の低い生徒が入学してしまうことが問題視されました。
学力が低い生徒は、大学に入ってからの学習についていくことが難しく、途中で挫折してしまう人がいるのです。
もちろん、本人の強い希望が通って入学したのであれば、卒業まで踏ん張れると思います。
そうではない生徒であれば、中退・退学してしまう可能性が高めであることを視野に入れて、AO入試を避けてみるのもひとつです。
自分の将来のために、今は心を鬼にして、弱い自分に打ち勝つのです。
なお、昨年度についてみてみると、合格者は一昨年度と同じぐらいでしたが、競争倍率が高くなりました。
ライバルも多いと言えそうですね。
推薦入試
推薦入試には、大きく分けて2種類あります。
指定校推薦
合格すると約束されたような入試です。
多くの方が「推薦入試」と聞いて思い浮かぶのが、この指定校推薦です。
ただ、高校側としては、安易に指定校推薦を出したくない気持ちがあります。
なぜなら、生徒本人のためにならないからです。
ここで頑張らなければ、このあと、生徒自身が苦労することになります。
指定校推薦で入学した大学での勉強についていけず、中途退学・休学した人もいます。
学力が低い生徒ほど、こうなることは 目に見えています。
わたしが教員をしていたときも、保護者の方から、
「早く子を楽にしてあげたいから、推薦を出してもらえませんか?」
と、よくお願いされたものです。
しかし、安易に合格が約束された推薦を出すことは、せっかくがんばろうとしている本人の気持ちを台無しにしてしまうことになります。
また、モチベーションが維持できず、学校で だらけてしまう生徒を何人見たことか・・・。
もし、推薦を狙えそうな内申点であっても、せめて秋までは、必死になって試験勉強してください。
それが、ゆくゆくはあなたのためになりますから。
学校も、点数が大学のレベルに達していないのに、推薦を出すわけがありません。
一生懸命に頑張る姿を先生に見せつつ、自分の学力を高める努力をしましょう。
公募制推薦
指定校推薦とは異なり、合格は約束されていません。
よく間違えられる推薦入試ですので、ご注意ください。
公募制推薦入試については、公立も私立も、ともに出願することができます。
ただし、公立の場合は、専願になります。
形式としては、次の3つが知られます。
・センター試験や大学共通テストを利用しないもの
・センター試験や大学共通テストの前に出願し、その結果を利用するもの
・センター試験や大学共通テストの後に出願し、その結果を利用するもの
公募制推薦入試については、受験資格があります。
たとえば、「高校での評定平均が3.5以上」という条件があります。
こうした大学側から提示されている条件の前に、高校側が提示している条件をクリアしていないと 受験が認められません。
高校側は、安易に推薦を出すことはしないので、たとえ評定平均が高くても、公募制推薦で出願させてもらえるとは限らないのです。
特別奨学生入試
私立大学で実施されている入試です。
この試験での成績が良く、かつ、何事も問題なく入学すれば、授業料などを減額してもらえます。
近年、日本の教育費が高いことが話題になっていますので、経済的に厳しい家庭にとってもありがたいですね。
ほかにも、無償の奨学金制度の充実を図る大学も出てきました。
わたしも、年間授業料の4分の1にあたる額の奨学金をもらっていました。
しかも、大学に在学している間、ずっと無償で もらい続けることができました。
この奨学金は、親の収入が関係なかったので、ふつうの無償型奨学金がもらえないわたしでも、無償でもらうことができました。
成績が優秀であれば、アルバイトをしていなくても、こうして大学から お金をもらうことができます。
このほかの情報として、近年は、200字程度の志望理由書の提出を求める大学が出てきました。
特別奨学生入試を考えているのであれば、夏までに志望理由を固めておきたいところです。
私立大学の定員が減って、受かりにくい?
私立大学の定員が減ったというより、合格させる受験者数の管理が厳しくなったというだけです。
とくに、8000人以上の大規模な大学で、この影響が出ていました。
そうした私立大学の定員管理最適化の動きにともない、昨年度は、各大学で合格者の数が大きく増減していました。
しかし、この合格者人数の大幅な増減が ようやく一段落しそうです。
定員管理最適化というのは、私立大学の規模に応じて、合格者の人数を制限するためものです。
かんたんに言うと、規模の大きい大学ほど、合格者の数が少なくなるようになっています。
割合で言うと、最大規模の大学の場合、定員の1.1倍までを合格者とすることができます。
こうして合格者を制限した分、受験生は、ほかの大学に流れていくと考えられ、定員割れの大学を少なくする効果が期待されています。
なお、私立大学が過剰に合格者を出した場合、その大学に対して出している「私学助成金」が減らされるしくみになっています。
本来であれば、2019年から減額が始まる予定でしたが、昨年度の調査結果から、すでに ある程度の効果が上がいるため、定員オーバーの人数に応じた私学助成金の減額は見送られています。
つまり、今年度も、私学は、合格者を定員数以下に抑えつつも、気兼ねなく 受験生を多くとれるということになります。
言い換えるならば、私立を受験する高校生にとっては、昨年度並みくらいの合格者が出ると予測されるため、ありがたいと言えるでしょう。
(一昨年度は、合格者の絞り込みが強かったため、私立大学の合格は難しかったです。)
昨年度は、すべり止めとして受験する私立大学のレベルを 多くの受験生が下げたため、難関私立大学の人気が下がりました。
下の方のレベルの大学をすべり止めとして受けることも大切ですが、ぜひ、上位レベルの私立大学も受けてみてください。
もし、お金に余裕があれば、で構いません。
夏休みに受験生は何を考えるべき?
志望校や志望する学部が決まっているか、そうでないかによって話は変わります。
志望校が決まっている
あなたが大人になってからのことも考え、その志望校を選んだことでしょう。
であれば、今は、合格できるように ひたすら学習を進めてください。
夏休みは苦手克服がおススメです。
また、大学に入ってからのビジョンを膨らませ、できれば、将来の職業についても 考えてみてください。
志望校が決まっていない
まずは、あなたの好きなこと・気になることから、興味がわく分野を特定しましょう。
そのあとで、大学・学部を絞っていけばOKです。
もし、なににも興味がわかないというのであれば、いっそのこと就職するのもひとつの手です。
社会に出てさまざまな勉強を積むことで、人間的に大きくなることができます。
もちろん、大変にはなりますが、社会人になってから大学に入ることもできます。
わたしの知り合いも、高校教諭として働きながら、卒業した大学とは別の大学に通っていました。
論文を書き上げるのが大変だと言っていましたが、時間をうまく使えるようになったと言っていました。
何ごともやってみないと分からないことがあります。
ぜひ、少しでも興味のあることにチャレンジしてみてください。
夏の段階でやるべきことは?
大きく分けて3つあります。
志望校とのレベルの差を知る
志望校との差を把握することです。
志望校の過去問を解いてみたり、出題形式だけでも見てみたりすることが大切です。
秋までに、自力で 半分以上解けるようになっていれば、十分に合格を狙えるでしょう。
まずは、レベルの差を知って、いつまでにどの科目をどのようにやりこむのか計画を立てましょう。
本気で特定の科目をやりこむのは、センター試験や共通テストが終わってからでかまいません。
とにかく、無理のない範囲で計画を立てることが必要です。
苦手を克服する
恥ずかしながら、わたしは、中学のころから「英語」が苦手でした。
大学受験生の夏休みに、どれだけ英語に時間を使ったか知れません。
少なくとも、毎日 英語に取り組んでいました。
センター試験の本番で、自己ベストの点数を取ることができ、夏に努力してよかったなと思いました。
時間は限りあるものです。
わたしは、努力タイプなので、休日8時間以上 家で学習していました。
受験生の夏は、時間をムダにしない気持ちが大切です。
受験生の生活リズムをつくる
あなたは、朝 何時に起きていますか?
もし、平日と休日で起床時刻が違うなら、明日の朝から毎日 同じ時刻に起きるように心がけましょう。
朝起きる時刻を一定にすれば、ヒトの身体は、自然とその生活リズムに慣れていきます。
たとえば、わたしが受験生だったときは、毎日 6時半に起きていました。
休日であっても、それは変えませんでした。
その後、休日であれば、7時半までに身支度と朝食を終え、そそくさと試験勉強を昼食まで取り組んでいました。
昼食が終わって、また13時半には、自室にこもって試験勉強していました。
もちろん、夕食の時間までです。
お察しのとおり、夕食が終わってから夜まで勉強していました。
この生活をすれば、12時間という勉強時間を確保できます。
もっと集中できた日には、12時間以上勉強していました。笑
さらに、22時半に寝て6時半に起きる生活により、毎日8時間の睡眠を確保していました。
わたしは、塾に通っていませんでしたので、ひたすら家で勉強に取り組んでいました。
あなたのライバルも、このように努力して試験に臨んでくることでしょう。
あなたもライバルと対等に戦えるように、この夏から、生活のリズムを「勉強」と「睡眠」中心に切り替えていきましょう。
夏の段階でやってはいけないことは?
やってはいけないことのひとつは、
受験勉強する科目を絞ること
です。
たとえば、志望校が「3教科型」だから、英・国・社にしぼって学習するという話が挙げられます。
夏から英・国・社だけ勉強していて、秋以降になって、急に志望校を変えることになったとしましょう。
この場合、同じ3教科型で受験できる、限られた大学の中で志望先を探さなければならなくなるのです。
つまり、この夏に、教科を絞って勉強するのは、間違っています。
(よほど学力が低い生徒なら話は別ですが。)
進学できそうな大学の選択肢を減らすよりも、むしろ、増やす方が優先だと考えます。
受験が近くなってから、行けそうな大学がないということが起きないようにするためです。
せめて秋までは、教科を絞って学習するのはやめましょう。
今がつらくても、5教科まんべんなく学習しておくことで、あとあとラクできるかもしれませんから。
もうひとつやっていけないのは、志望校をかんたんにあきらめてしまうことです。
6月の模試でC判定やD判定が出ていても、試験本番で成功する例は何度も見てきました。
成功する生徒の特長は、粘り強いことです。
どんなことも最後まで取り組み、どの科目の勉強もおろそかにしないことです。
また、分からないことがあれば、学校の先生に何度も質問に行くべきです。
それも、「こいつ、また質問に来たぞ?」と、先生が思うくらいに、です。
志望校があるなら、最後まで、あるいは、センター試験や大学共通テストまで、キープしておくべきです。
自分のモチベーションを高めることにもつながります。
下を見ていてはキリがありません。
上を見ましょう。
世の中には、自分よりも秀でた人がたくさんいますから、それに追いつけ追い越せという勢いで受験に挑みましょう。
自分に負けない人が受験も制します。
受験生へのメッセージ
受験生に対して言いたいのは、
目先のことだけに とらわれないこと
です。
模試の結果に、一喜一憂するかもしれません。
志望校が3教科型だから、限られた教科だけやっていればいいと考えるかもしれません。
本当に、それで後悔しませんか?
何か月先、何十年先のあなたが今のあなたを見て、
「あのとき、この選択をしていなければよかったのに・・・」
と思うかもしれません。
今、あなたにできるのは、できるだけ視野を広げて、将来への選択肢を増やしておくことです。
高すぎる目標はNGですが、ある程度は高くてOKです。
凡人が成績を伸ばすのにかかる時間は、本気で始めてからおよそ3か月後からだと言います。
7月から本格的にやり始めて、やっと10月以降に結果が表れ始めるのです。
これは、多くの人に共通して言えることです。
たくさん問題を解き、経験値を積むことで、より早く、より正確に問題を解くことができるようになるでしょう。
まわりの大人から、
「勉強しなさい!」
と怒鳴られるかもしれません。
しかし、やみくもに勉強していても、結果は出ません。
そうではなく、まず志望校との差が どれだけあるのか把握することから始めるのです。
それから、志望校との差を埋めるためには、何をどのように学習するべきか、考えるのです。
そうしてプランを立ててから、受験勉強は始まります。
保護者の方も、学校の先生も、あなたが笑顔で卒業するところを見たいはずですからね。
後悔のない大学受験、ファイトです!!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
あなたの夏休みが、有意義なものになりますように。