準備運動【膝回し】半月板損傷につながる!?

学校の体育の授業や、スポーツをする前に、準備運動を行いますよね。

実は、その準備運動の時点で、「膝」を壊す原因をつくっているかもしれません。

今回は、膝回し運動と半月板損傷の関係について、お伝えします。

 

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準備運動を行う3つの理由

多くの人は、軽く準備運動(のようなこと)をしたあとで、すぐに身体を動かし始めます。

なぜ準備運動をするのでしょうか?

ケガを防ぐ

準備運動する大きな理由は、本格的に行う運動やスポーツでケガをしないようにするためですね。

 

準備運動を怠ることがケガにつながるのは、筋肉や関節が固まったまま運動に入るからだといえます。

とくに、準備運動で、関節をほぐしておくことで、大きなケガを防ぐことができます。

 

 

関節をほぐすことは、関節の可動域を広げるということです。

「身体が硬い」という言い方をしますが、これは、関節が動く範囲「可動域」が狭いことを意味します。

 

関節の可動域が狭い状態で激しい運動を行うと、腱が切れたり、筋肉を傷めたりすることにつながります。

ふだんから運動していない人は、腱や筋肉が伸びることに慣れておらず、身体が固くなりがちです。

その状態で いきなり走り出すと、脚をつったり、脚に痛みが出たりすることがあります。

  

 

また、関節の可動域を広げておくこと以外にもメリットがあります。

肉離れの予防につながることです。

肉離れは、突然 筋肉を使うことで、うまく筋肉が伸び縮みできず、筋肉の一部が断裂してしまうことです。

ご想像の通り、とても痛い状態です。

筋肉を少しずつ運動に慣れさせるためにも、準備運動は有効だと言えます。

 

心を運動に適した状態にする

運動と言えば、「身体」に注目されがちですが、実は、心や精神状態も大きく関係することが分かっています。

つまり、身体は、心と密接な関係があるということです。

 

もし、あなたが うわの空で バスケットボールの試合に参戦しているとしましょう。

今、見方からボールをパスされました。

そのあと、どうしていいか判断に迷っている最中に、相手チームの一人が軽くぶつかってきました。

そうして、あなたは床に倒れ、ボールは奪われてしまう始末・・・。

 

ケガはなかったものの、ケガをする危険性が高いことがお分かりいただけると思います。

こうして、心が「運動」に向かっていないと、ケガや事故につながりかねません。

 

本格的な運動に向かう心構えをするためにも、準備運動は有効なのです。

 

身体の活動レベルを細胞単位で高める

準備運動をする理由のひとつは、身体を細胞レベルで 動きやすい状態にすることです。

 

秋冬シーズンになると、気温が低いため、体温も下がりやすくなります

スノーボードやスキーなど、寒い場所で ウィンタースポーツをするならなおさらです。

「寒いから 動きたくない」

と言って、準備運動を怠ると、体温が低いまま、本格的なスポーツをし始めることになります。

体温が低いと、身体の細胞内において、化学反応が起こりにくくなります。

 

そのため、スポーツを行うのであれば、準備運動をして、身体を温めておく必要があるのです。

身体を温めておくことには、大きく分けて3つのメリットがあります。

 

(1) 筋肉の収縮に必要なATPを合成しやすくする

わたしたちは、運動するときに 筋肉を使います。

筋肉では、細胞単位で行われる「代謝」によって、日々 多くの熱エネルギーが生み出されています。

この熱エネルギーは、筋肉の細胞内で起こる化学反応によって生じます。

 

とくに、筋肉の細胞内では、次のような 呼吸反応が起きています。

  有機物 + 酸素 + 水 → 二酸化炭素 + 水 (+ ATP + 熱エネルギー)
 C6H12O6 6O2 6H2O 6CO2 12H2O

 

この反応で得られるATP(アデノシン三リン酸)は、筋肉を伸び縮みさせるために必要な物質です。

つまり、あなたの筋肉を伸び縮みさせ、身体を動かすために、この反応を進める必要があるのです。

身体の中で起きている こうした反応の多くは、酵素によって スムーズに進みます。

 

もし、準備運動をしないまま、いきなり激しい運動をしたら、どうなるでしょうか。

 

細胞単位で行う呼吸反応がATPの消費スピードに追いつかず、筋肉の伸び縮みに必要なATPが不足してしまうことが考えられます。

(実際は、呼吸以外にATPを生み出すしくみがあるため、ATPが不足して動けなくなることはめったにありませんが。) 

 

早い話が、体温が上がっていることは、ATPが 継続的に得られやすい状態であることを示しているというわけです。

 

(2) 酸素を筋肉すみずみに運びやすくなる

そもそも、ATPという物質は、日常的に作り出されているものです。

なぜなら、あなたが「運動」と感じていないことでも、筋肉が伸び縮みしているのですから。

たとえを挙げるとキリがありませんが、字を書くとき、料理をしているとき、座るとき、すべての場面で筋肉を使います。

 

ただ、身体を激しく動かすときは、同じようにはいきません。

ふだん生み出しているATPの量では、足りなくなるからです。

 

運動するときは、筋肉を大きく収縮させたり、連続的に筋肉を使ったりします。

だから、ATPを大量に、かつ、継続的に生み出す必要があります

そのためには、呼吸反応を多く行わなければならず、大量の「酸素」が必要になります。

 

酸素は、日常的に血液を利用して、各細胞に運ばれています。

運動するときは、とくに、酸素を筋肉の細胞にたくさん届けられるよう、血液の流れが速くなるのです。

こうして、血液が流れやすくなっているとき、熱エネルギーが放出されやすい状態にあります。

だから、身体が温まるということが言えます。

 

心臓の拍動を促進しておけば、呼吸反応の進行が滞ることなく、ATPを継続して供給できるというわけです。

 

(3) 筋肉に素早く信号を送ることができる

高校の「生物」の授業でも学ぶお話をしましょう。

 

わたしたちの神経細胞は、細胞内外の電気的な変化で、あらゆる信号を伝えています。

この電気的な変化は、神経細胞が太ければ太いほど速く起こり、結果的に早く筋肉に収縮の命令を伝えることができます。

さらに、神経細胞の太さだけでなく、体温も神経の伝導速度に影響を与えます。

とくに、体温が高めだと、神経細胞の電気的な変化は、速く起こることが知られています。

  

つまり、身体を暖めることによって、筋肉の収縮が より短い時間で起こりやすくなるということです。

 

「膝回し運動」は、膝によくない準備運動

膝回し運動を行う目的は、膝のまわりの筋肉をほぐして、膝が痛くなるのを防ぐことではないでしょうか。

 

実際のところ、膝回しすることで、膝まわりの筋肉は 多少なりとも伸びます。

しかし、筋肉以外の伸びてはいけないところが伸びてしまうということを ご存知でしょうか。

 

伸びてはいけないところ、それは、膝関節の靭帯です。

 

膝には、4つの靭帯があると言われます。

関節の内側と外側にそれぞれ存在する「内側側副靭帯」と「外側側副靭帯」、さらに、膝関節の中に存在する「前十字靭帯」と「後十字靭帯」です。

 

このうち、膝をグルグル回していると、とくに伸びやすいのは、「内側側副靭帯」「外側側副靭帯」です。

この2つの靭帯は、左右方向に膝関節を支えるはたらきがあります。

しかし、これらの靭帯が伸びてしまうと、左右方向の支えが足りなくなり、膝関節が不安定な状態になります。

 

こうして起きる膝関節のぐらつきは、あなた自身が感じる前に、身体が自然と補正してしまうことがほとんどです。

つまり、あなたが知らないうちに、膝のぐらつきが強制的に抑えられているわけです。

ただし、膝のぐらつきをカバーするために、歩き方が不自然になったり、通常は使わない筋肉を使うことで筋肉痛になったりすることがあります。

ひどいときには、膝が腫れたり、O脚になったりする場合もあります。

 

そして、膝関節を支えている半月板にも負荷がかかり、半月板の損傷につながることがあります。

半月板の損傷の仕方には、放置してはいけないタイプがあり、場合によっては、膝に水が溜まったり、変形性膝関節症を引き起こしたりすることもあります。

 

 

さらには、加齢に伴って、半月板は傷つきやすくなるものだと言われています。

もしかしたら、膝回し運動によって、傷つきやすくなっている半月板に傷をつけてしまうことになりかねません。

これに加えて、40歳以上の方は、階段から落ちたり、道で転倒したりしないようにお気をつけください。

なぜなら、些細なことでも、半月板は損傷しやすい状態になっていますから。

 

以上のことから、膝回し運動は、よくないと言われるのです。

膝に痛みを抱えているのであれば、より一層、膝回し運動は控えてくださいね。

 

実際にあった「膝回し」での半月板損傷

運動会

実際に、わたしが教員をしていたとき、体育の準備運動で、膝回しをしていた生徒が急に膝の痛みを訴え、病院に行ったという事例がありました。

それまでの準備運動では変わった様子はなく、ふつうに体育の各種目に取り組んでいました。

しかし、準備運動の膝回しの最中に「ゴリッ」というイヤな音が自分の膝でしたそうです。

その直後から膝が痛く、脚を曲げるのが痛くてできなくなってしまったそうです。

 

この話を聞いて、自分の膝のことを思い出しました。

 

実は、わたしも半月板損傷(横断裂)という診断を受け、十数年以上経ちます。

1年に数回、ロッキングという現象が起き、膝が曲げられなくなることがあります。

手術はしていません。

しかし、この膝とうまく付き合っています。

それもこれも、膝まわりを鍛える方法を教えてもらう機会があったからです。

 

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負担をかけない「膝」のための準備運動

準備運動する人たち

わたしは、中学生のころ、半月板損傷の痛みがひどく、整形外科・リハビリテーションに通った経験があります。

そこで教えていただいたのは、「膝を鍛えておく」ということです。

 

一般的に、「筋肉を鍛える」とは言いますが、「膝を鍛える」とは言いませんよね。

これは、膝が関節であるがゆえです。

 

先ほどもお伝えしましたが、関節には、筋肉があります。

だから、膝を守るためには、膝に負担をかけない方法で、膝まわりの筋肉を鍛えればよいのです。

 

膝まわりの筋肉は、どうしたら鍛えられると思いますか?

 

よく考えられるのは、膝の曲げ伸ばし運動(屈伸運動)をすることです。

しかし、わたしは、屈伸運動をすると、膝でゴリゴリと音がします。

つまり、膝関節に何らかの負担をかけてしまっているということです。

これでは、膝を痛めてしまうことにつながります。
(実際に、屈伸運動で痛くなりやすいです。)

 

 

そこで、リハビリテーションで教わったのは、膝に負担をかけない筋肉のほぐし方です。

 

まず、イスに座ります。
(もし、立った状態で行う場合は、手すりなど安定したものにつかまって立ちましょう。)

次に、右脚を軽くもち上げます。

そして、宙に浮かせた右脚の膝からつま先までを回していきます。

時計回りに10回、反時計回りに10回まわしましょう。

そのあとは、右脚を床につけ、左脚をもち上げて同じことをします。

 

このときのポイントは、できるだけ膝を中心に回すことです。

ただし、無理をしないことが最重要です。

 

この運動をし始めたころは、膝が滑らかに動かず、ゴリゴリした感じがありました。

しかし、続けるうちに、膝まわりが鍛えられてきたようです。

 

社会人になった現在も、無理のない範囲で膝まわりを鍛え、かつ、酷使しないように気をつけています。

そのおかげで、ほとんど膝の痛みのない生活を送っています。

リハビリテーションのお兄さんに教えていただいたトレーニング方法がここまで活かされるとは、思っていませんでした。

ありがたい限りです。

 

人生100年時代と言われます。

できることなら、最期まで、自分の脚で歩いていたいですよね。

 

(まとめ)膝を大切にするための5か条

では、あなたの膝のためにできることを まとめておきましょう。

  1. 準備運動で身体を温め、筋肉をほぐしておくこと。
     
  2. 冷房などで膝を冷やさず、温めて血行を良くすること。
     
  3. 日ごろから 膝まわりの筋肉を無理せず鍛えること。
     
  4. 正座や和式トイレを避け、膝に過度な負担をかけないこと。
     
  5. 歩き方や履き物を見直し、膝への負担を減らすこと。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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