教員【定時退校】できる先生とは
わたしは、初任者だったときから定時退校していました。
逆に、ほかの先生方は、かなり遅くまで学校に残られていました。
今回は、若手教員やこれから公立学校の先生になられる方に向けて、定時退校「できる人」と「できない人」の差をお伝えします。
定時退校とその現状
あなたがどこかの組織・会社に雇用され、働くとき、就労時間は契約によって決められます。
公務員の場合、一般的には、朝8時から夕方5時が勤務時間になります。
書面上は、実働8時間程度です。
公立学校の先生も「公務員」なので、これに該当します。
書面において、夕方5時でその日の勤務が終わると決まっているなら、ふつう この時刻に帰ります。
この「夕方5時」のように、決められた時間のことを「定時」といい、教員が定時に学校を出ることを「定時退校」とよんでいます。
特別支援学校であれば、勤務開始時刻が朝早いので、夕方5時よりも前に定時が設定されています。
しかし、わたしの経験上、テスト週間等でない限り 9割以上の先生は、定時に帰りません。
先輩の先生方は、定時のチャイムが鳴っても 気にすることなく、職員室で 談笑や業務を続けています。
わたしが初任者のころは、
「先輩方には定時を知らせるチャイムが聞こえていないのだろうか…?」
と疑ったほどです。
ただ、先ほど「定時に帰らない」と表現しましたが、一部の先輩方に言わせると「帰ることができない」らしいのです。
これについて、同じ条件で働かれているのに、定時退校が「できる先生」と「できない先生」がいるのはなぜでしょうか。
この2者の違いを見ていきましょう。
教員業務は「ブラック」なのか
よく「学校の先生は、ブラックな仕事だ」と言われます。
「ブラック」と言うのは、きっと 業務内容が多岐に渡ること、時間外労働が多いことなどを理由にされているのだと考えます。
では、実際に、学校の先生は、どのような業務を行っているのでしょうか。
参考までに、10個挙げてみました。
- 授業
(教材研究・授業準備・予備実験などを含む) - 生徒指導
(心のケアも含む) - 進路指導
(カリキュラムマネジメントを含む) - クラス経営
(掲示物や配布物の作成を含む) - 行事計画・運営
(安全かつ子どもが楽しめるように工夫する) - 時間割作成
(年度途中に変えることもある) - 保護者の対応
(相談やクレーム対応が多い) - 地域住民の対応
(クレーム対応がほとんどである) - 他校との情報交換会
(子ども個々の特性を理解する) - 教職員研修
(教員のレベルアップを図る)
ほかにも、問題視されている「クラブ活動」や「部活動」、災害発生時の避難場所としての役割など、数多くの業務があります。
先生は、毎日 授業をしているだけでいいかというと、そうではないのです。
その場その場で、対応力も求められます。
さらに「国民全体の奉仕者」としての責務もあります。
このように、業務の内容で見ると多そうに思われるかもしれません。
ただ、民間企業でも同じです。
仕事の大変さは、その仕事をしてみないと分かりません。
だから「ブラックだ」という想像ができるのです。
正規教員を経験した一人として、正直な意見を述べると、学校の先生は、ブラックな仕事だとは言い切れません。
教員以上に大変な仕事や、誰もやりたがらない仕事が存在するからです。
その方々の仕事を代わりにやってみれば、教員の業務がどれだけラクか分かるでしょう。
これに加えて、採用時には、すべての業務をこなすことができる、オールマイティで、豊かな人間性をもつ人が選ばれているはずです。
にもかかわらず、学校で働く先生たちが「ブラックだ」と言っているのは、なぜでしょうか。
先生がブラックだと言う理由
実際に勤めている教員自身が「ブラックだ」と言う理由には、3つのポイントがあると考えます。
教育実習での誤認
一つ目は、教育実習に行っただけで、教員としての業務全体を分かった気でいることです。
これは、初任者教員や若手教員において言えることです。
教育実習では、授業が実習の中心です。
そのため、先ほど挙げた正規教員が行う10個の業務のうち、主に1個しか行っていないことになります。
これが、正規教員として働くようになると、いきなり 分掌業務や生徒指導、部活動など、授業以外の業務を割り当てられます。
個人的には、教育実習のときの10倍の業務量があると感じます。
そのため、このギャップに「ブラックだ」と言っているのではないでしょうか。
(偉そうに伝えているわたしも、このうちの一人でした。)
これから教育実習に行かれる方は、こちらをご覧ください。
仕事の押し付け
教員の多くは、自分の仕事を増やしたくないと思っています。
にもかかわらず、新たな仕事を作り出してしまいます。
もちろん、子どもたちのためを思って。
ほとんどの教員は、この矛盾に気づいていません。
では、そうして新たに生み出された仕事は、だれがやるのでしょうか?
最初に言い出した先生でしょうか?
だれでもできる仕事の場合は、たいてい若手の先生に任せられます。
わたしの経験上、部活動や時間のかかる作業も、若手に任せられがちです。
そのため、若手の先生は、他にやらなければならない仕事があるにも関わらず、だれでもできる仕事を押し付けられてしまうということがあります。
法規上、上司の命令は絶対なので、とくに理由がなければ やる必要があります。
個人的には、こうした年功序列に違和感があります。
もちろん、教員の給与制度にも。
日本は、上下社会ですからね…。
ただ、年齢が大きい者ほど力があるというのは、今や通用しないと考えます。
だから、若手からすると「押しつけ」「無理強い」と受け取られるのです。
では、実際に赴任校であった「人事の押しつけ」について、例を紹介しておきましょう。
主人公は、5年目経験者(当時)のA先生です。
次年度の校内人事は、年度末の3月下旬に管理職が決めます。
そのとき、A先生は、一度も経験していない分掌の主任に選出されました。
人事に不服があっても、気持ちを隠して「はい、やります」と答えてしまう先生が多い中、A先生は、
「わたしになった理由が分からない!」
と言って、校長先生に直談判されました。
結局、管理職に言いくるめられて、A先生は「1年間だけ」という条件付きで主任をやることになったそうです。
しかし、この1年だけでなく、「せっかく主任になったんだから」と言われて、次年度もその分掌主任をやらされたそうです。
「もう誰も信じられない」
と、A先生は嘆かれていらっしゃいました。
わたしが勤めていた公立学校の人事は、おもに教頭先生が行っておられましたが、ウソをつくのは人としてありえないですよね。
ただし、これについては、ウソをついてでも 引き受けてもらわなければならない理由があるのかもしれません。
人事を決める側にも、心苦しさがあるのではないでしょうか。
万が一、「主任」が存在しないと、学校内の業務が滞ってしまいかねません。
こうした「押し付け」があるのも、教員がブラックだと言われる理由につながるのではないでしょうか。
仕事の効率
教員は、1年サイクルで、やるべきことが決まっています。
だから、先を見通すことができる先生は、先へ先へ仕事を進めます。
そして、そうした先生は、たいてい定時に帰ります。
とても効率的な仕事ぶりです。
これに対して、直近のことしか見ていない先生は、
「まだ先のことでしょ?今やらなくても大丈夫。」
と考え、先のことをやろうとしません。
そうしてギリギリになってからやるため、余裕がなくなってしまいます。
定時に帰りたくても帰れず、残業という「タダ働き」をするしかありません。
そうした先生は、自分の選択を悔いることがあまりありません。
ということは、自分のことを棚に上げて「ブラックだ」と言っているに過ぎないのではないでしょうか。
できる先生との大きな違い
では、本題に戻ります。
定時退校「できる先生」と「できない先生」には、決定的な違いがあります。
先ほど挙げた「仕事の効率」を上げようとしているかどうかです。
わたしが正規教員として働いていたとき、定時に帰らないと言われている先生の仕事ぶりを観察していたことがあります。
この観察をしていく中で、分かったことがあります。
定時退校できない先生は、勤務時間中のムダなおしゃべりが多いのです。
仕事の効率を下げていることに気づいていない様子でした。
1時間の空きコマのうち、平均して40分を 仕事に関係のない おしゃべりに費やしていたのです。
1日に空きコマが3コマあれば、平均して120分=2時間もムダにしていることになります。
しかも、誰かが話し始めると、その人につられて、いっしょに話し続ける先生もいました。
そうした先生方全員、仕事はあまり進んでいませんでした。
先生の多くは、おしゃべり好きです。
しかし、仕事の効率を上げる上では、そのムダさを知っておくべきです。
子どもたちに、「口を動かす前に手を動かせ」と言いませんか?
その言葉を、そっくりそのまま自分に言ってください。
おしゃべりのムダさを知っている先生は、効率的に仕事を終えられ、もちろん、定時退校されていました。
「できる先生」は、同僚とコミュニケーションをとる目的で、必要最低限のおしゃべりしかしないのです。
効率を上げる必要性
ブラックだと言われている理由の一つに、「残業代が出ないから」と言われることがあります。
公務員なので、そもそも「残業」にあてはまるのか分かりませんが、勤務時間外にどれだけ働いても給与は上がらないということです。
早い話が、勤務時間を超えて業務をすると、タダ働きになるということです。
一般企業であれば、残業手当が給与に加算されます。
そのため、働いた分が給与に反映されます。
しかし、教員は、残業手当など存在しないのです。
そのため、夜11時まで残って仕事をした先生も、定時に帰ってゆっくりしていた先生も、給与は同じだということです。
残業手当が出ない代わりに、特別手当があると言う方もいます。
ただ、その金額は微々たるものです。
わたしが勤めていたときは、給与のたった4%分でした。
金額に換算してみましょう。
基本給で30万円もらっている30代の人なら、12,000円です。
安すぎると思いませんか?
現場でも、不満の声をたくさん聞きます。
組合の人たちが国や県、各自治体にかけあって、この特別手当の割合を上げてもらおうとしています。
しかし、お金を出してもらうことは厳しいのが現実です。
予算などでコストをカットするのは良いことですが、これは削ってはいけないお金だと考えます。
家庭をもつ世代である30代の若手教員を平気で残業させておいて、たった12,000円しか与えないというのは、あまりにもひどすぎます。
働き損しないために
働くことがお金に関係するということは、働き方によって、損をしてしまう可能性があるということです。
損しないためには、定時に帰ることが第一です。
定時に帰るために、仕事の効率アップをするほかに、役割にも注目してみましょう。
早い話が、副担任をやれば、定時に帰りやすいです。
副担任の業務量は、正担任の半分程度です。
正担任は、ほぼ毎日20時近くまで残業しないと、次の日の仕事が回らないという場合があります。
それでも、正担任の給与は、副担任の給与と同じなのです。
わたしには、これが理解できませんでした。
担任手当を導入して、給与を同期の副担任よりも多くしていただければ、やろうと思えますね。
年功序列なだけの給与制度であるため、初任者のときに、正担任は絶対やらないと決意しました。
また、「産休が取りやすいから、副担任をしている」という先生も、実際にいらっしゃいます。
わたしが知っている先生も、介護職から転職して、教員になられました。
理由は、知り合いに、教員は産休を取りやすいと聞いたからだそうです。
そのほか、育児をしていらっしゃる方や、親の介護をされている方も、副担任をされていました。
これは、副担任であれば、時間的に余裕をもてる証拠です。
残業は10時間以内
ここまでお伝えしてきた わたしにとっては、初任者のころから、定時退校が当たり前でした。
ほぼ毎日 定時に校門を出て、10分で帰宅し、当サイトの記事を書き続けていました。
初任以降も副担任を続け、大変だと言われる分掌のリーダーになっても、定時に校門を出ていました。
これは、副担任だったからこそ できたことだと感じています。
副担任も、影でほかの先生方を助ける大切な存在なのです。
定時に帰りたいのなら、副担任をおススメしますよ。
ただし、仕事を効率よくこなすことが大切なポイントです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。