英語が話せない【高校教員】多すぎる件

どうして 日本人は、日常会話すら、英語で話すことができないのだろう。

ある公立高校で教員をしていたとき、ふと思ったことがあります。

その結果、行きついた わたしなりの答えをここに記します。

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日本の英語教育の移り変わり

日本の英語教育の始まり

そもそも、日本の学校で英語教育が始まったのは、江戸時代のことです。

今から200年以上も さかのぼります。

 

江戸時代の日本と言えば、だれもが「鎖国」を思い浮かべることでしょう。

オランダなどの限られた国との交易しか行っていなかった時代です。

そうした歴史的な背景があって、日本独自の文化が芽生えたのは事実ですが、ここで世界から遅れをとったことも、また事実です。

そうして、世界から離れている日本に、やがて外国人が近づき、開国を迫ってきました。

しかし、ここで問題が生じたのです。

 

言葉が通じず、意思疎通が困難である――

 

日本は、「鎖国」という体制を維持しようと 一生懸命でした。

だから、日本に近づいてくる諸外国に、「鎖国している」と、英語で伝えようと考えたのです。

通訳できる人材を育成するため、一部のエリートに対してだけ英語教育をほどこしていました。

これが、日本の英語教育の始まりです。

外国人教師から英語を学んだ明治初期

それから時が経ち、明治時代になると、英語教育を行うためだけの外国人教師が増え、エリート学生に対する英語教育が広がっていきました。

明治時代には「近代化」が進んだ と、歴史の教科書にも書かれています。

 

明治時代の初めは、外国人を日本に招き入れ、英語をネイティブから学んでいました

エリート人材を育成する学校では、すべての授業が英語で行われていたほどです。

しかも、その授業を担当していたのは、全員が外国人教師だったと言います。

現代であれば、ネイティブから直接英語を学ぶことができるのは、うらやましいことです。

外国人教師から日本人教師に変わった

しかし、そうした英語教育も、ひとつの変革期を迎えました。

時は、明治時代の後期です。

 

この頃の日本では、国粋主義の風潮が高まり、「ネイティブの英語で、英語を学ぶ」という時代から一変しました。

いわゆる「日本人の英語で、英語を学ぶ」ようになってしまったのです。

 

そのため、英語を教えるための外国人教師を採用する数がどんどん減っていきました。

その代わりに、英文法を教える日本人教師の数が増えていったのです。

 

この変革の結果は、言うまでもないかと思います。

エリート学生の英語を話す力は、どんどん落ちていきました。

そう、今のように、文法を中心とした英語教育の根幹は、このとき築かれたのです。

明治の終わりは「受験英語」の時代

「近代化」が進んだことで、しだいに、英語で書かれた出版物も増えていきました。

そうして、多くの一般人も英語に触れるようになっていきました。

 

その一方で、「英文法中心の英語教育をやめよう」という声もあがっていました。

英語の音声から学ぶべきだ、授業中に英語だけを使うべきだ、という考えです。

「英語と日本語を相互に訳せればよい」という考え方から脱却し、「英語を話せるようになろう」と言う学者もいました。

しかし、多くの日本人教師は、これを聞き入れず、いわゆる「受験英語」を教えたのです。

大正~昭和時代の英語教育は廃止?

そうした中、戦争とともに、大きな変革期がやってきます。

英語教育を廃止しようとする動きです。

 

学校で日本人教師の英語教育を受けたところで、英語が上達しないという不満が、多くの人々から出たと言います。

さらには、日露戦争のあと、英語教育の廃止に意識が集中したということも重なりました。

 

とくに、昭和時代の初めは、「お国のために尽くす時代」だったため、学校でも、英語教育の時間は削られました。

なんと言っても、英語は、敵の国の言葉でしたから、英語教育が一層敬遠されたのです。

 

もちろん、戦時中も、英語教育の必要性や重要性を唱えた人はいました。

しかし、そうした人たちは小数であり、政治的な圧力の前では屈するしかなかったようです。

結果的に、英語教育が廃止されることはありませんでした。

授業時間数は削られたものの、平成まで続くことになりました。

戦後の英語ブーム

敵国に敗戦し、英語を学ばされることになりました。

そのため、一般人も、こぞって英語を学ぶようになり、「英語教育を廃止すべきだ」という意見はどこかへ消えてしまいました。

さらには、「高等学校の入試科目に英語を加えるべきである」という意見までもが出るようになり、中学校での英語教育を必修化させようとする動きがありました

これ以降、少しずつ学校で英語教育が導入され、実質的な必修科目となっていったのです。

英会話教室が大人気の平成時代

昭和の終わりから、グローバル化がどんどん進んでいると言われます。

それには、少なからず1回目の東京オリンピック開催が関係しているのではないでしょうか。

 

これまで見てきたように、字面での英語教育を受けてきた日本人にとって、「英語を話すことができない」というのは、大きなマイナスになっているのです。

そこをカバーしようとしたのか、平成には、英会話教室に通う人が急増したと言います。

小学校での英語教育を必修化へ

また、大人だけではなく、子どもの英語教育にも変化が見られるようになりました。

1998年に改訂された小学校学習指導要領では、2002年から「総合的な学習の時間」の中での「英語活動」が許可されました。

その後、2008年の改訂においては、小学校5・6年生を対象に、週1時間の英語教育が必修化されたのです。

もちろん、直接教育に携わる小学校の教員は悲鳴を上げました。

しかし、英語を教えるのではなく、慣れ親しませることに重きを置けば問題ありません。

これからの日本の英語教育も、今と変わらないままなのでしょうか。

 

以上は、次の文献を参考に書かせていただきました。

盛岡大学紀要 第34号 小川 修平
「英語教育の歴史的展開にみられるその特徴と長所」

日本の英語教育は「遅れている」はウソ

ここまでお伝えしてきたように、歴史的な背景があって、今の英語教育になっているのです。

わたしが考えるに、日本の英語教育は、遅れてなどいません。

英語が話せない=英語教育がダメ

というわけでもありません。

 

明治時代の後期から、日本の英語教育が変わらないのは、日本語が大切だからです。

つまり、日本人には、昔から愛国心があるということを英語教育の歴史が示しているのです。

 

学校の教育で、英語を流暢に話させようとすると、今行っている「国語」の授業と同じだけ、あるいはそれ以上の時間が必要になります。

もし、「国語」の授業を削ったら、どうなるかお分かりでしょうか?

まともに日本語を話すことのできない日本人だらけになってしまうと考えられます。

敬語も ろくに話せない、社会人として恥ずかしい大人を大量に生み出しかねないのです。

 

そうした背景は、多くの方が知らないところです。

日本の英語教育は間違っていないことを、あなたは知っていてください。

変わる大学入試で 英語はどうなる?

以前までは、「読む・書く」という2技能を見て、英語能力を判断していました。

しかし、2020年の入試をもって、現行の大学入試、通称 センター試験が終わりを迎えます。

それ以降の英語科の試験は、「読む・書く」に「聞く・話す」が追加され、4技能で英語能力を判断するようになります。

早々と導入している大学では、TOEICやGTECという外部試験をもとに、点数を加算するようになっています。

また、大学入試だけではなく、大学院生を対象にした入学試験でも、外部検定・試験を利用して選抜する方法がとられているのも事実です。

 

そうした流れを受けて、学校の英語教育も少しではありますが、変化を見せています。

高等学校では、模擬試験のようにGTECを受けることができるようにしてもらえていたり、スピーキングに力を入れて授業をしてもらえていたりします。

 

実際に、高校に勤めていたので分かりますが、そうした英語科教員の努力はすばらしいものです。

ただ、ネイティブのように話せない英語科 高校教員がほとんどです。

日本人から学ぶ英語では、ネイティブから教わらないと分からない「発音」を学ぶことができません

英語を教えるという熱意には 目を見張るものがありますが、これが現状です。

だから、学校での英語教育をあてにしてはいけません。

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1年間 イギリスに留学する

日本人の英語が弱いと言われるのは、母音を聞き分けることができないからです。

母音というのは、日本語で言うと、ア・イ・ウ・エ・オです。

しかし、英語で言うと、アがアだったり、エに近いアだったりするわけです。

そうした母音を子どものころから聞き慣れていない、つまり、聞き分けることができないから、発音することも難しいのです。

 

学校現場では、それをしなさいと言います。

英語の先生は、英語をネイティブのように話せないのに・・・。

日本語の英語を聞いて育つから、カタカナの発音になるのです。

 

それでは、ダメだとお思いならば、海外の生活を経験しがてら、留学をおススメします。

 

ただし、1か月では短すぎます。

半年~1年間、日本から離れれば、少しは自然と話せるようになるものです。

とくに、イギリスの英語はきれいです。

英語の本家、ヨーロッパ圏だからこその魅力もあります。

英語圏で留学をお考えなのであれば、ぜひ英国を選んでください。

海外での生活は、人生にとっておきのヒントをくれるはずです。

最後に

わたしは、国際的に活躍してくれる人が今以上に多くなってほしいと考えます。

高校の英語教育であれば、専門的に英語を学ぶこともできるはずです。

だから、そうした場所では、積極的にネイティブから英語を学ぶべきなのではないでしょうか?

 

一部、スーパーグローバルハイスクール(SGH)のような学校では、すでに実施されています。

学校を選べるのであれば、よりレベルの高い学校を目指してください。

保護者の方は、それを押し付けたくなるかと思いますが、グッとこらえて行く末を見守ってあげてください。

ただ、レベルの高いものを見せてあげるという社会勉強もさせてあげてくださいね。

自分の人生は、自分自身で決めるものです。

良い選択でも、悪い選択でも、進んで行きます。

そこには必ず「経験」という相棒が横にいます。

自分を信じて、前へ突き進みましょう。

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